今回は広域水道の監視制御設備に納入させていただいた、可搬式タッチパネル(盤面取付用のタッチパネルを筐体に収めて持ち運べるようにしたもの、後述します)を用いた水道監視システムをご紹介いたします。
図1に本案件のシステム構成図を示します。
本案件の広域水道では、浄水場で浄水した水道水を、市町村を跨いだ配水池やポンプ場といった各拠点に向けて送水しています。
各拠点にはPLCが設置されており、これらを子局と称しています。浄水場にも各拠点と1対1対応でPLCが設置されており、これらを親局と称しています。親局の上位には、中央監視コンピュータ(当社所掌外)があります。親局と子局はVPNを介して接続され、子局の状態の監視、親局からの制御が行われています。積算帳票の記録や、電動弁の応動異常(制御渋滞)の検出、警報履歴の表示といった機能も備わっています。
VPN(Virtual Private Network)とは、共用回線を利用して作られる仮想のプライベートネットワークのことです。
親局、子局のPLCには、Ethernetユニットが取り付けられており、親局-子局間の通信はEthernetユニットが制御しています。一方、CPUユニットにもEthernetポートが内蔵されており、こちらはタッチパネルとの通信を制御しています。
本案件では図2に示す可搬式タッチパネルを使用しています。今回納めた可搬式タッチパネルは、三菱電機社製のタッチパネル(GOT2000シリーズのGT27モデルの12.1型盤面取付用タッチパネルであるGT2712-STBAを採用)を、当社にて製作した持ち運び用の持ち手がついた筐体に収めたもので、タッチパネルに接続されているEthernetケーブルを引き出してPLCに接続する仕組みです。タッチパネルの電源はAC100Vですので、タッチパネルに接続されている電源プラグを引き出してコンセントに挿せば動作します。
可搬式タッチパネルは、普段は浄水場にある監視盤内部の架台に固定して親局に接続しておきます。すべての親局は同じネットワークに繋がっているので、この状態ではすべての親局をモニタすることができます。トラブル発生時やメンテナンス作業などで各拠点に人が向かう際は、架台から取り外した可搬式タッチパネルを持って行き、各拠点にて可搬式タッチパネルを子局に接続してモニタします。
広域水道には多くの配水池やポンプ所があり、そのすべての場所にタッチパネルを設置するとなるとコストがかさむ上、配水池やポンプ所は通常時は無人なので、トラブル発生時やメンテナンス作業ではタッチパネルが必要でも、常時設置しておく意味は乏しいかと思われます。したがって、このような用途に対しては可搬式タッチパネルを採用するのが合理的だと考えます。
各拠点で表示すべき情報は当然異なります。同じ入出力アドレスを持つ信号であっても、拠点が違えば信号の意味は異なっています。したがって、全ての拠点の画面を1つのプロジェクトファイルに収め、接続した拠点によって違う画面を表示するようにしました。
また、親局のPLCはそれぞれ違うIP アドレスを持っているのでタッチパネルから区別が可能ですが、子局のIPアドレスは全ての拠点で共通(子局同士は接続されていないので共通のIPアドレスでも相互に衝突しません)なので、タッチパネルからはどの局に接続されているか区別ができません。そのため、子局のPLCの特定のデバイスに拠点ごとに固有の数字を入れておき、そのデバイスを参照することでタッチパネルがどの拠点に接続されているか認識できるようにしました。
本案件のような可搬式タッチパネルを用いたシステムは広域水道や市営水道での各拠点の監視に活用でき、特に普段は無人となるような拠点なのでタッチパネルが設置されていないが、トラブル発生時などの対応を円滑に進めるためにはタッチパネルがあった方が便利、というような場面で役に立つと思います。
例えば、遠方の拠点でPLC故障という警報が発報しているが、具体的な故障内容が分からない、といった場合に、可搬式タッチパネルを持っていけば故障内容の詳細を表示したり、各信号の状態をモニタしたりして、トラブルの解決に役立てることができる、というような活用が考えられます。
このようなシステムでのお話がございましたらお気軽にご相談下さい。
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